銀座起業コンシェルジュの若林圭子です。
先日、立て続けにお電話でご質問されたことがあります。
「株式会社の発起人と取締役は、同じ人がならないといけないのですか?」と。
質問の答えは、「いいえ」です。
これはかなり多くの方が疑問に思われることだと思いますので、
今回は株式会社の発起人と取締役についてそれぞれ整理してみていきましょう。
実は、サラリーマンを辞めて起業し、
株式会社の設立を考えているということで、ご相談にくる方の中には、
「発起人=取締役」だと、思っている方が多くいます。
では、このように思っている方が多いのはなぜでしょうか?
株式会社に勤めている場合は、
取締役などの言葉はよく耳にすると思います。
「先日、●●取締役がさ・・・」「うちの会社の代表取締役なんだけど・・・」などと、
同僚や先輩社員たちと話をすることもありますよね。
しかし、「発起人」という言葉は実際にはあまり聞くことがないと思います。
さらに日常の会話でもあまり出てこないですよね。
「出資者」、「株主」などの言葉は聞いたことがあるけど、
「発起人」という言葉はなかなか聞いたことがない、
という方も多いのではないでしょうか。
では、最初に、株式会社の「発起人」は誰のことをいうのか?
ということについてみていきましょう。
・発起人とは
発起人とは、「株式会社の設立を企画・決定し、その会社に出資して、
定款に署名または記名押印し、設立手続きを完了する人」
のことをいいます。
簡単に言うと、発起人は「出資して、会社を作る人」です。
さらにイメージしやすくいうと、
会社の資本金を出す人のことです。
株式会社を設立する際、発起人は、
出資して株式を必ず1株以上引き受けなければなりません。
したがって、会社設立後は、会社の株主になります。
「発起人」は会社設立後には、「株主」という名前に変わると思ってください。
ここまでで、皆さんにおわかりいただけたと思うのですが、
会社設立後は、「発起人=株主」ということになりますよね。
では、「発起人になるための資格制限はあるのか?」
というと、一体どうでしょうか?
実は、会社法上、発起人になるための資格制限は特にありません。
例えば、未成年者でも、法定代理人の許可を得ることにより、発起人になれます。
しかし、15歳未満の場合は、印鑑登録ができないので、発起人にはなれません。
また、外国人でも、日本で外国人登録原票に登録していれば、
印鑑登録ができるので、発起人になれます。
さらに、法人を発起人にすることも可能です。
発起人は「人」という字が入っていますが、
自分が株式会社を設立する際、
例えば自分の会社以外の法人に発起人になってもらうということもできるのです。
発起人は、人数についての制限がないため、発起人は何人いても構いません。
つまり、発起人は1名以上いれば、株式会社を設立できるということになります。
それでは次に、「取締役」についてみていきましょう。
2.取締役とは
取締役とは、「会社の経営業務をする人」です。
取締役は会社の重要事項や方針を決定します。
では、代表取締役は誰なのか?というと、
代表取締役とは「取締役の代表」のことです。
代表取締役は、取締役の中から選任され、
株式会社を代表する代表権を持つ取締役です。
例えば、取締役が一人だけの会社なら、
その取締役が代表取締役になります。
3.まとめ
これまで、「発起人」と「取締役」についてみてきましたが、
それぞれの違いがおわかりいただけたと思います。
株式会社を設立する際、必ず決めなければならない事項の中に
この「発起人」と「取締役」があります。
「発起人」は株式会社が設立した後は「株主」になります。
つまり、設立した会社のオーナーさん、
いわゆるその会社の持ち主(所有者)です。
一方、「取締役」は設立した会社の経営業務をしていく人です。
皆さん、「雇われ社長(取締役)」なんて言葉を聞いたことはありませんか?
そうです!
これこそまさに、「発起人(株主)」≠「取締役」です。
「雇われて取締役をやっているだけで、自分が所有している会社ではない」
ということです。
このように、株式会社は
「株主が会社を所有し、会社の経営は取締役が行う」
ということになります。
これを「所有と経営の分離」といいます。
したがって、「自分一人が、会社の発起人(株主)で取締役も自分一人です」
というような、発起人(株主)と取締役が同一である会社もあれば、
発起人(株主)と取締役が別である会社も存在するということです。
発起人(株主)と取締役が同一である会社は、
「発起人(株主)」=「取締役」
となります。
一方、発起人(株主)と取締役が別である会社は、
「発起人(株主)」≠「取締役」
となります。
これは、結構、混乱されている方が多いので、
ここでしっかり理解してください。
皆さんが株式会社を設立する際、
必ず決めなければならない「発起人(株主)」と「取締役」。
この違いを理解して、スムーズに会社設立手続きをすすめてくださいね。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。