株式会社の資本金1円の落とし穴とは?

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銀座起業コンシェルジュの若林圭子です。

先日、株式会社設立のご相談をいただいた方から、
こんな質問をされました。

「若林先生、資本金1円でも株式会社が設立できるって聞いたのですが、
本当に1円でも設立できるのですか?」と。

答えは、イエスです!

平成18年(2006年)5月に施行された新会社法によって、
資本金が1円でも株式会社は設立できるようになりました。

その前はどうだったかというと、
株式会社の設立には最低1,000万円以上の資本金が必要でした。

だから、今は資本金1円でも株式会社は設立できます。

「自分は少ない起業資金しかないので、1円で株式会社を設立します!」
という方がいたらどうでしょうか?

本当に資本金1円で株式会社を設立してもいいのでしょうか?

少し考えてみましょう。

そこで、まず初めに、資本金とは一体何か?についてお話ししますね。

資本金とは、「発起人が事業をスタートするために出資する金額(運転資金)」
のことです。

さらに、資本金は会社の規模を見る一つの目安と考えることができます。

では、資本金の金額が大きいからといって安定した会社なのか?
というと実はそういうわけではありません。

例えば、資本金が2億円の会社があるとします。

実際は、現状の会社規模や売上高と直結するものではなく、
それが現実の会社財産とは異なる場合が多いからです。

資本金とはあくまでも、「ビジネスを運営するうえでの元手金」
と考えるとわかりやすいと思います。

その一方で、資本金が多いということは、
リスクを承知したうえで出資してくれた人が多い、
という会社の信用という面での基準の一つになります。

では、実際に資本金1円で株式会社を設立すると
どんなことが起こるのでしょうか?

以下で、具体的にお話ししますね。

1.資本金の額で、創業融資の額がほぼ決まってしまう!

創業融資をお考えの方は、特に注意が必要です。

創業融資とは、これから会社を設立する方や
会社を設立して間もない方むけの融資制度のことです。

そして、資本金の額で、創業融資の額がほぼ決まってしまい、
実際の融資限度額は資本金の2倍くらいまでの額などといわれます。

ですので、創業融資を受けたいとお考えの方は、
あまりにも少ない資本金の額には注意してください。

2.債務超過になりやすい!

例えば、1円で株式会社を設立して、少しでも赤字になったとします。
すると、決算書が債務超過状態になってしまいます。

融資を受けようとした場合、多くの金融機関が
「過去3期分の決算書を持ってきてください」と言ってきます。

すると、どうでしょうか?

決算書が債務超過であれば、金融機関はなかなかお金を貸してくれません。

ですので、1でお話ししたことと関連しますが、
融資をお考えの方は、少なすぎる資本金には注意してください。

3.対法人取引できない可能性も

これは、1と2と少し違った視点ですが、
資本金も取引先の信用度の判断基準の一つになります。

例えば、会社同士で取引をしようとした場合、
相手の会社は自分の会社の情報を何かしら調べます。

「この会社と本当に取引して大丈夫かな?」ということで、
相手の会社のホームページを見たり、登記簿謄本を取って確認したりします。

この登記簿謄本というものですが、
誰でも取得してみることができるのです。

では、登記簿謄本の中身には何が書かれているのかというと、
会社の重要な情報が載っており、資本金の額も載っています。

だから、初めて取引しようとする会社の場合には、
登記簿謄本を取得して、「その会社が一体どんな会社なのか?」
を調べることができるのです。

ホームページでも会社概要の中に、
資本金を載せている会社は多いですよね。

その場合、ホームページからでも、
相手の会社の資本金の額を知ることができます。

そして、いずれかの形で、会社の資本金の額を知った際に、
その会社が資本金1円だったらどうでしょうか?

場合によっては、
「うちの会社は資本金1円の会社とは取引できない!」
などと言われる可能性があります。

なぜなら、「資本金1円だけど、この会社って本当に大丈夫なのかな?」と
思われてしまうかもしれないからです。

つまり、不信感を抱かれる可能性があるのです。

素晴らしい事業内容で志も高く、
「これから株式会社を設立して、ビジネスを加速するぞ!」という時に、
少なすぎる資本金のせいで取引できない・・・
そんな状態になるのは、もったいないですよね。

資本金は運転資金ではあるものの、
やはり取引先の信用度の判断基準の一つになる、
ということも忘れないでください。

「では、一体資本金はいくらにすればよいのですか?」
とのお声も聞こえてきそうですね。

これは、事業の種類や規模によってまちまちだと言えます。

例えば、飲食店だったら、店舗を借りる資金が必要ですし、
小売業なら、まとまった商品を最初に購入しなければなりません。

一方、ホームページ管理などIT関連事業などは、
最初からそんなに大きな資金は必要ない場合も多いでしょう。

資本金の使い道は、主に二つです。

それは、

①会社設立時に最低限度、必要な資産などの購入
②会社に十分な収益が発生するまでの運転資金

です。

資本金の目安は、上記の二つを考慮しながら決める必要があります。

そして、「業種ごとに3~6ヶ月、何も利益がなくてもビジネスを続けていけるくらいの金額」
ということを目安に、資本金の額を決めてくださいね。

でも、「どうしても少ない資金しかないので、資本金1円で設立したいのですが・・・」
という方は、資本金1円で設立し、後々、増資する、
ということをお考えになるのも一つの選択肢です。

ただし、今までお話ししましたように、
少なすぎる資本金は色々な面で注意が必要になります。

資本金1円の落とし穴にはまらず、資本金の額を決め、
いいビジネスのスタートを切りましょうね!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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