銀座起業コンシェルジュの若林圭子です。
個人事業主の方が株式会社を設立しようと考えた際(法人化しようと考えた際)、
一番気になるのが、株式会社を設立するメリットではないでしょうか?
私のところにご相談にくる法人化を検討中の個人事業主のほぼ100%の方が、
「株式会社を設立するメリットとは何ですか?」と聞かれます。
株式会社を設立するメリットはたくさんあります。
例えば、取引先など対外的な信用が得られることや、
融資を受ける際に有利になり、資金調達の幅が広がる
など多くのことがあげられます。
その中でも特に皆さんが一番気になるメリットの一つである
【節税面でのメリット】について、今回はみていきたいと思います。
皆さんは、「個人事業主より株式会社の方が節税対策をできる」
ということを聞いたことがあるかと思います。
では、一体これはどういうことでしょうか?
個人事業主が納める税金には、
所得税、住民税、個人事業税、消費税などがあります。
ここからは、具体的に所得税についてみていきましょう。
所得税法では「所得」は10種類に分かれていて
個人事業主が関わるのは「事業所得」といわれるものです。
この「事業所得」は、売上-経費で出てきます。
事業所得などの所得の合計から扶養控除等の「取得控除」を引いたものが
「課税所得」になります。
そして、「課税所得」に「所得税率」をかけるのですが、
この「所得税率」は累進課税です。
つまり、所得が増えれば増える程、税率が高くなっていきます。
課税所得(課税される所得金額) 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 9万7,500円
330万円超695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超900万円以下 23% 63万6,000円
900万円超1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円
現在、所得税率は上記の課税所得に応じて7つの区分に分けられています。
最終的には、「課税所得」に「所得税率」をかけて
控除額を差し引いたものが「納税額」になります。
例えば、上記の区分をみてみると、
課税される所得(課税所得)が195万円以下の場合は5%で、
195万円を超える課税所得がある場合は10%で、
330万円を超える課税所得がある場合は20%となります。
もし、①550万円の課税所得があった場合、
195万円×5%+135万円×10%+220万円×20%=67万2,500円
が税金となります。
それぞれの段階ごとに税金額を計算すると、
「9万7,500円」+「13万5,000円」+「44万4,000円」で「67万2,500円」
になります。
実際には、①の場合、
550万円×20%の「110万円」に控除額の「42万7,500円」を差し引いて「67万2,500円」
と計算します。
さて、ここまで個人事業主の所得税について、お話ししてきました。
一方、株式会社を設立すると、
どんな税金を払わなければいけないのでしょうか?
株式会社を設立すると、会社として納める税金があります。
これを法人税といいますが、法人税には、
法人税(法人所得税)、法人事業税、法人住民税があります。
このうち、個人事業主の所得税にあたるのが、
法人税(法人所得税)だと思ってください。
法人税が法人所得税とも呼ばれることからもわかるように、
法人(会社)の「所得」に課税される税金となります。
法人税の税率は、所得が800万円を超えるか800万円以下か、
ということだけで税率が決まります。
課税所得(課税される所得金額) 税率
800万円以下 15%
800万円超 23.4%
上記のようになっています。(※平成28年4月1日以後に開始する事業年度)
それでは、ここからまとめに入っていきたいと思います。
ここまで、個人事業主の所得税と法人税(法人所得税)についてみてきました。
個人事業主の所得税は累進課税なので、
所得が多くなればなるほど所得税を払わないといけないことが
おわかりいただけたと思います。
一方、個人事業主が株式会社を設立した場合(法人化した場合)、
上記のように、法人税は比例税率(固定税率)が適用されるので、
税率は最高でも23.4%です。
したがって、株式会社を設立すると、
課税所得が多くなればなるほど税率が高くなるということはありません。
これまで比較してみてきましたが、
個人事業主が法人化した方が有利になるラインがあります。
売上があがり、所得が多くなればなるほど、
節税を考えることは、今後のビジネスを円滑に行ううえで、
大変重要なポイントになります。
個人事業で所得が多くなり、法人化を検討する際、
「法人化すると、一体自分はどれくらい税金面で優遇されるのか」
と疑問に感じたら、一度専門家に相談することも検討してみてもいいかもしれません
次回は、他にもある株式会社設立のメリットについてみていきたいと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。